2013年9月1日掲載
2013年9月1日掲載

公共の美術館としての新たな形、そして使命について


装いも新たになった東京都美術館は、上野公園の敷地からエスプラナードへと広々とした風景を形成しています。
Q: 東京都美術館は、リニューアル前と後では建築空間としてはどのように変わったのでしょうか。
 
 今回の改修工事では、企画展示を行う企画棟の地上部分を建て替えて大変広くなりました。また、新たに正門前に拡がるエスプラナードを見渡す窓が配され、屋外も見晴らす事ができるようになりました。地下1階から地上2階までのフロアを繋ぐエレベータとエスカレータが増設されました。また植栽が増えて、屋上緑化や太陽光発電のシステムも追加されました。都民に親しまれている設計当時の姿を残しながら、ユニバーサルデザインへの対応や施設の充実を図り、機能も一新しました。本館前に高く茂っていた樹木等の植栽を変更して上野公園との繋がりを明確にしています。
 このようにして、本館は前川國男の設計時の上野公園の銀杏、椎、けやき等の巨木により形成された上野の森を疎外しないというテーマを生かしながら、公募棟、企画棟、交流棟の活動のテーマを明確にする、導線を確保しました。
 
Q: リニューアルに伴って、建築空間の面だけでなく、事業内容のソフト面も変化があったとの事ですが、そればどのようなものですか。
 
 リニューアルするにあたり、新しいミッション、つまり美術館の使命を明確にしました。それは次のようなものです。
 

新しい東京都美術館は、「アートへの入り口」となる事を目指します。展覧会を鑑賞する、子供たちが訪れる、芸術家の卵が初めて出品する。障害を持つ人が何のためらいもなく来館できる、すべての人に開かれた「アートへの入り口」として生まれ変わります。新しい価値観に触れ、自己を見つめ、世界との絆が深まる「創造と共生の場=アート・コミュニティ」を築き、「生きる糧としてのアート」と出会う場とします。そして、人々の「心のゆたかさの拠り所」となる事を目指して活動していきます。

 
 理想高くミッションを明示したのですが、これらを実現するために、具体的には4つの事業を柱に据えています。
 
1.特別展や企画展等、見る喜び、知る楽しさを提供する「展覧会事業」
 
2.「アート・コミュニケーション事業」
 
3.公募団体やグループと連携し、つくる喜びを共有する「公募展事業」
 
4.「佐藤慶太郎記念 アートラウンジ」や美術情報室、ミュージアムショップ、レストラン等、訪れる楽しさを充実させる「アメニティ事業」
 
(次ページに続く)
 
 
創建当初の外壁の打込タイルも、既存の工法を用いて設立当初の風合いを考慮して再現されました。